あの日、あの時、あたしは怒りにまかせて、
ニナちゃんとオトメの力を出してぶつかったの！！
そして、すっごく遠いところまで吹き飛ばされちゃって、
目を覚ましたら、この村にいたの。
今は、アスワドっていう黒い谷に身を寄せているんだよ。
でもね。ここの生活も悪くないよ。
あたしのこと「アリンコ」って呼ぶ、意地悪な男の子もいるけど、
みんなやさしくしてくれるの。
うん、だからオトメのこととか、目の前に起こったこと、嫌なこともぜ〜んぶ忘れられそう。
それと、ここの頭領はとっても強くて優しい人なの。
え〜と、頭領っていうのは、ミドリさんのことだよ。
そんな頭領がね。あたしにある秘密を話してくれたの。
それはあたしのお母さん、蒼天の青玉マイスターオトメの秘密。
なんだか話の途中から悲しくなって、これからどうしたらいいのか、わからなくなって……。

妾はどうしてこんなところにおるんじゃ？
ミコトもおらんし……、アリカもどこ行ったのじゃ。
だいたいマスターをほっぽり出して、どこかに行ってしまうオトメなんてどこにいる？　ホントひどいオトメじゃな……。

オ、オホン、という状況なので、
今回は、再びマシロ・ブラン・ド・ヴィントブルームがお送りするぞ。
心して聞くが良い、…………と威勢よく言いたいところなんじゃが…………。
今回は平常心で語れるほど、簡単にお送り出来ないのじゃ。
そもそも、アリカといっしょだったところまでは覚えてる。
肝心なのは、その後じゃ！
う、う〜ん…………、どうしてもそこから後が思い出せないのぉ〜〜。

なんじゃと？　それじゃあ、意味ないって？
うるさいわ！　思い出せないんだから、しょうがないであろう！
そ・ん・な・こ・と・よ・り！！！！
妾がどうしてこんなところにおるのか、それを教えてくれるのが先じゃろう！！！！

スレイブの大群がこのヴィントブルームに押し寄せてきたの。
わあ〜〜、もう、みんなごめんなさい、
今週は何も言えないくらい、大変なことが起きちゃったの。
言いたいけど言えないくらい、あたしの頭のなかがぐちゃぐちゃで、パンクしちゃいそう。
とにかく、とにかく、あたしがガルデローべに来てこんな大事件はじめて!!
て言うか、ガルデローベの歴史はじまって以来の大事件みたい。

まずは深呼吸！　深呼吸！
ふう〜〜〜〜、はあ〜〜〜〜。
ああ、もう、本当はこんなことしてる暇なんてないのに……。

ん？　でも、今歩いてるこの地下水路ってすごく臭いよね。
これだけ臭いと、隠れる場所には最適だよね、ね、マシロちゃ〜〜ん。
……って、冗談言ってる場合じゃないか？

あたしとニナちゃんは、お姉様たちとの卒業記念舞闘の代表に選ばれたんだよ。
相手はチエ先輩と、マキマキの人。せっかくの晴れ舞台だし、しっかりやらないとね。
でも、卒業っていうだけあって、お姉様たちはどんどん進路が決まっていて、
お別れしなきゃいけないと思うと、ちょっと寂しいよね。
ん？　っていうことは、ひょっとしたら、今度はあたしが「お姉様」って呼ばれるの？
「アリカお姉様♪」な〜んて。
アハハ、ちょっと想像できない……。
ま、まぁ、それはいいよね〜（笑）。

さて、代表に決まってから、ニナちゃんの特訓が、もうホントに厳しくって！
無事に当日が迎えられるのかな？　ちょっと、心配…………。
でもね、毎日エルスちゃんが作ってくれる差し入れがホントおいしいの！
これが無くなっちゃうのは、名残惜しいけど、早く特訓から開放されたいよ。
あ〜、まだかな、まだかな、今日の差し入れ♪
あ、エルスちゃんの足音が♪。
って、エ、エルスちゃん？
どうして、そんな驚いてるの〜〜〜〜！！！！

マシロちゃんが、お部屋に閉じこもったきり出てこないって言うの。
アオイさんに様子を見て欲しいって言われて、急いでマシロちゃんの部屋に行ってみたら、やっぱりおかしいの。
あたしは、ふさぎこむなんて、マシロちゃんらしくないよ、って言ったんだけど……、誰かさんのことが気になって仕方ないみたい。
もしかしてその相手って、あの巧海頭さん？？？？？
も〜う、そんなことで部屋に閉じこもってたの〜〜。
もっとすっごいことで悩んでるかと思ったのに！　心配して損しちゃったかも。
でもあの誕生日のときになにかあったんだね。
マシロちゃん、「……好き」になっちゃったの？
え〜、隠しちゃってもだめだよ〜〜〜〜。
そんな時は、思いっきり体を動かして、いっぱい食べて忘れちゃおうよ、マシロちゃん。
って、あれれ？　おかしいな？
マシロちゃんを励ましているはずなのに、なんで涙が出てくるの〜〜。
なんで、あたし泣いているんだろう……。

オトメ同士の戦闘があったんだって！
しかも、ヤヨイちゃんの出身国のロムルスと、ミーヤちゃんの出身国のレムスの間で起こったっていうの。
でも、あたしにはちょっとピンとこなくて、
思わず「喧嘩みたいなものでしょ」って言っちゃったら、何だか気まずい雰囲気。
ごめんネ。ヤヨイちゃん、ミーヤちゃん。
でも本当にマイスターオトメ同士の戦いって、すごい大変なことだなんて、そのときは良く分かってなかったの……。

ねえエルスちゃん、聞いて欲しいの？
これって、何なの？　ホントどうしていいかわからないの！
この胸のもやもやは何？　……恋？　エルスちゃん、それってあたしが誰かを好きってこと？
ちちち、違うってば！
絶対に、絶対に違うもん！
あの人のことなんて、これっぽっちも、想ってないもん！
……あ・の・人のこと……なんて……。